予防と健康ブロック レポート

            

 

1、はじめに

今回、予防と健康のレポートを出すにあたり最近増えてきた精神疾患による社会に対する問題について考えるよい機会を与えてもらったと思います。

 

2、選んだキーワード

僕が選んだキーワードは、メンタルヘルスと心理的負担です。なぜこのキーワードを選んだのかというと、今現在僕は将来精神科に進みたいと思っているからです。だから、このキーワードにしました。

 

3、選んだ論文の内容と概略

 1つ目に、渡部真弓先生、田中克俊先生の論文、「職場復帰支援プログラムの考え方」を読みました。

概略

 「精神疾患により休業した労働者は今後の経過についての見通しが立てにくく、再発・再燃を繰り返すけーすが少なからず有り、またそれを防止するための方法論の不確実さが有るため、精神疾患により休業した労働者の職場復帰支援には身体疾患の場合とは違ったいくつかの難しさがある。また精神疾患の場合、精神症状や業務遂行能力の評価そのものに確立された方法があるわけではなく、診断書病名による直接の病院や予後の推測は難しい。そのため、産業保険スタッフにとって職場復帰可否の判断や職場復帰後の支援プランを策定することは非常に難しい作業となっている。また主治医となる精神科医や心療内科医との連携においても、それぞれの立場やプライバシーに関する考え方の違いを埋められず、必要最低限の情報交換も行われないまま職場復帰支援を進めざるを得ない場合も少なくない。安全(健康)配慮義務の面からも身体疾患の場合より見えにくい部分が多くあるため、未だ完全寛容に至っていない労働者、特に心理的負担に対する脆弱性が認められる労働者に対する健康管理上の配慮には、より細かな観察と臨機応変な対応が必要になることも多い。一方で、精神的機能が低下した労働者が職場復帰を果たすまでの間には大きな距離があるため、円滑な職場復帰を果たすためには適切な支援を行うことが必要である。

 そのためには、職場復帰支援に関するきちんとしたルールを作ることである。職場復帰支援においては、休業の開始から職場復帰、フォローアップまでの流れを明確にしておくことが必要である。職場復帰支援の手引きでは5つのステップが示されている。

<第一ステップ>病気休業開始及び休業中のケア

イ 労働者からの診断書(病気休業診断書)の提出

ロ 管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等によるケア

       ↓

<第二ステップ>主治医による職場復帰可能の診断

労働者からの職場復帰の意思表示及び職場復帰可能の診断書の提出

       ↓

<第三ステップ>職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

イ 情報の収集と評価

  (イ)労働者の職場復帰に対する意志の確認

  (ロ)産業医等による主治医からの意見収集

  (ハ)労働者の状況等の評価

  (ニ)職場環境の評価

  (ホ)その他

ロ 職場復帰の可否についての判断

ハ 職場復帰支援プランの作成

  (イ)職場復帰日

  (ロ)管理監督者による業務上の配慮

  (ハ)人事労務管理上の対応

  (ニ)産業医等による医学的見地から見た意見

  (ホ)フォローアップ

  (ヘ)その他

       ↓

<第四ステップ>最終的な職場復帰の決定

イ 労働者の状態の最終確認

ロ 就業上の措置等に関する意見書の作成

ハ 事業者による最終的な職場復帰の決定

ニ  その他

       ↓

  【  職場復帰  】

       ↓

<第五ステップ>職場復帰後のフォローアップ

イ 症状の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認

ロ 勤務状況及び業務遂行能力の評価

ハ 職場復帰支援プランの実施状況の確認

ニ 治療状況の確認

ホ 職場復帰支援プランの評価と見直し

 

 これらのステップは完全に独立しているわけではなく、いくつかのステップをまとめたり再構築したりしながら、それぞれの事業場の都合に合わせた形で実施してよいと思われる。その他職場復帰に関して考慮すべき事項として試し出勤制度(リハビリ出勤制度)や「まずは現職へ復帰」の原則、職場復帰に関する判定委員会(いわゆる復職判定委員会等)の設置などがある。」

 

 二つ目に、五十嵐良雄先生の論文、「医療機関最前線のメンタルクリニックの復職支援に果たす役割」を読みました。

概略

 「増加してきたメンタルクリニックの立地は、人の集まるオフィス街や繁華街あるいは住宅地に立地し、通院にはきわめてアクセスがよい。単に職場や家庭に近いだけではなく、病院よりも気楽に受信できる診療所の敷居の低さも相俟って、メンタルクリニックを受診する患者数が飛躍的に増えてきたといえるであろう。メンタルクリニックの数が増えてきた結果として、全国の精神科医療機関への通院患者数が増加しているが、それは精神化病院に通院していた患者が通院先をメンタルクリニックに変えたばかりではなく、従来であれば精神医療機関を受診しなかった患者群がメンタルクリニックを受診しているのではないかと予測される。メンタルクリニックを受診する患者の疾患割合ではかねてから統合失調症が少なく、気分障害や不安障害が多いといわれてきたが、当院の開院後の1年間をみても統合失調症は5%であり、その後の割合は年度を経るに従い更に低下している。疾病別に見ると気分障害と神経症性障害で全体の85%を占めていた。性別では男性が7割を占め、年齢別割合では男女とも30歳代が最も多く次いで20歳代であり、彼らが7割を占め、40歳代と続き、50歳代以上はわずかであった。時代とともに統合失調症の軽症化が指摘されるのと同様に、気分障害においてもうつ状態の軽症慢性型、ディスチミア親和型うつ病、非定型うつ病などが従来のメランコリー親和性うつ病とは異なる新たなうつ病類型として見直されており、特に若い年齢層にこのようなタイプのうつ病を多くみるようになっている。このような若年層のうつ病では自殺念慮などはほとんど認められず、その点も含め症状は軽度に属するものが多いが、症状は長期にわたって続く傾向があり、その経過の中で社会活動を大きく障害する休職率でみると決してその割合は低くない。当院のうつ病患者のうち診断書を発行して休職させた割合は3割であった。その中には何回も休職と復職を繰り返す例もあり、症状は軽症であるが社会的予後として決してよいとは言えない。3人に1人は診断書を発行して休職するという現実はビジネス街でのメンタルクリニックの現状である。このように当院で診療を行っているうちにうつ病で仕事を休職する人が極めて多いことから、NTT東日本関東病院で実施されている職場復帰プログラムを参考とし、うつ病で休職中の患者に対する職場復帰を目的とした医療モデルのリハビリテーションという位置づけの復職支援プログラム(リワーク・カレッジ)を作成した。プログラムのステップとして、外来診療においてうつ病の症状を改善させ規則正しい生活リズムを取り戻す段階、症状を監視しつつ月曜から金曜の週5日、1日6時間の訓練という一定の付加をくわえる段階、復職後に一定のフォローを行う段階をもうけている。さらにクリニックと同じビル内にデイケア施設を設置した。

 休職から復職後までを5段階に分けると病状回復期、リワーク・カレッジ前半期、リワーク・カレッジ後半期、復職準備期間、復職後のフォローがある。

 今後もメンタルクリニックではそのアクセスのよさから患者はますます増えていくことが予想され、職場のメンタルヘルスにおける役割も一層増大していくであろう。今回の我々のうつ病患者の復職をテーマとした精神科デイケアの機能としては従来の精神科デイケアとはまったく異なるものであり、メンタルクリニックにおける現代的な役割としては、通院してくる患者特性にあわせたサービス提供が重要であるといえよう。

 メンタルクリニックとしてメンタルヘルスに関わる役割としては産業医としての活動もあげられる。いまや職場においてメンタルヘルス対策は最重要テーマであり、精神科医を産業医として招く会社も増えてきた。産業医として職場のメンタルヘルスに直接関わる経験は、診療場面において患者を診る際にも新たな視点を与えてくれるであろう。また、主治医としての役割はさらに大きい。直接治療を担当するばかりでなく、先に述べたように職場のメンタルヘルスの視点からの治療的関与は、患者をより大きく回復させることに役立ち、社会からの期待は大きいものといわざるを得ない。」

 

4、選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察

 うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患です。あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような重症例まで存在します病を反復する症例では、20年間の経過観察で自殺率が10%程度とされています。 アメリカでは、男性の10人に1人、女性の5人に1人が、一生に一度はうつ病にかかったことがあるというデータがあり、日本でも人口の約5%はうつ病の患者さんであるといわれ、この数年間で確実に患者数は増えてきています。

 うつ病になる理由としては、その人がもっている感受性や感覚、置かれている生活環境など、いくつかの要素が積み重なって、うつ病になると考えられています。患者さんの症状にあわせて、最近のうつ病の診断には、「DSM−W」というマニュアルが多く採用されています。これは、症状の程度と持続期間によって、重症のうつ病「大うつ病」、軽症のうつ病(気分変調障害)に分けて、診断方法が決められています。

 うつ病の治療には、1に休養、2に薬物療法、3に精神療法という組み合わせで行なわれます。多くの場合、仕事などのストレスの原因から遠ざかり、心身ともにゆっくりと休養することを指示したうえで、抗うつ薬の服用をすすめます。そして、薬の効果が確認されたら本格的に精神療法へと移行します。しかしうつ病の治療で最も重要なことは家族や職場の人たちの助けが必要ということです。うつ病について正しい知識をもって、理解と愛情で支えることが必要となるでしょう。

 

5、まとめ

 このように社会が成長するにつれ、それに伴いうつ病の人も増加しています。この病気は心の病なのでなくなることがありません。なので患者に対するよりよい接し方や治療法などを模索する必要があります。うつ病というと世間のイメージはあまり良いものではないと思いますが、人々が病気を理解することがうつ病に対する治療の第一歩になると思います。僕自身、医師になってうつ病の人を少しでも多く救えるよう努力したい思います。